the "text" by 鹿野淳 (MUSICA)
このアーティストはかつて「音楽を守る人」だった。
しかし。
このアーティストは今は「人生を守る人」になろうとしている。
そんな始まりの場所に鳴っている音楽がアルバム『love your life』であることを、ちょっとだけ語らせて欲しい。



石田ショーキチは、今はAIRとして活動している車谷浩司とスパイラル・ライフを結成し、「サウンド・オブ・マイ・ジェネレーション」というお題を掲げながら、渋谷系以降のひとつのポップの在り方を提唱し続けた。彼らの音楽は「フロム・ビートルズ・トゥー・グランジ」という広域なロック・クロニクルを綴りながら、この国の90年代的な「無愛想なフリした極彩色のポップネス」をクリアに響かせ、結果的に横浜アリーナを即完売させるほどのムーヴメントを起こした。未だにこの刺激的かつメランコリックな夢を抱き続けるポップ・フリークが多いことはご存知の通りである。
その後、彼はスクーデリア・エレクトロを結成した。これはショーキチが寺田康彦や吉澤瑛師を誘って作ったもので、ソングライティングやパフォーマンスのみならず、プロデュースやエンジニアリングまでを手掛ける音楽集団を目指した。昔でいうところのバグルスやゴドレイ&クレーム、今でいうところのティンバランドやブラック・アイド・ピーズのようなものかもしれない。石田ショーキチはこのユニットを始める最初に「僕はスパイラルライフの意志を繋げる」と僕に発した。要は、良質な音楽を人を選ばないポップで表すということだ。
このスクーデリアを拠点に、ショーキチはプロデュースからセルフ・パフォーマンスまで、スタイルに拘らずに奔放な活動を続けた。初期のCoccoやWINO、そしてバンジー ジャンプ フェスティバルや中期のスピッツまで、ロックなサウンドでポップなスピリットを表す新しいキーパーソンとして、彼の役割はポップ・シーンに広まっていった。奔放かつピュアな数々の活動が実り、時にはL⇔Rの黒沢健一やスピッツの田村明浩や盟友のホリノブヨシとMOTORWORKSというバンドを結成したりもした石田ショーキチの活動は、ビジネス的にも音楽的にも、ジャンルの壁を自ら作り、最初から賞味期限の限られた音楽を飽きずに生産するこの国のマーケットに、自由な挑戦状を叩きつけていた。
冒頭で記した「音楽を守る人」というのは、こういった活動に起因した印象である。

スクーデリア・エレクトロの季節を閉じたショーキチは、地元の街のライヴハウスへ通い詰め、気に入った若手バンドと交流を図ったり、ニューインディアンデスロックというバンドにギタリストとして加入してしまったり、羨ましいほど本能的なミュージック・ライフを過ごしていた。しかしそれは、スパイラルライフやスクーデリア・エレクトロに続く新しい本道が見えてこない彼の、今後はプロデュースやエンジニアリングなどのバックサイド・ワークのみで生きて行こうという意志を含めた迷いや思考期間そのものを表していたのかもしれない。
「『ちょっと石田君、もうスクーデリア解散から1年ですよ。そろそろ何かしましょうよ』って去年の今頃に言われて。そうか、やっぱりやったほうがいいのかって(笑)。幸いプロデュースの仕事は年間何枚もお仕事もらって作らせてもらってるんで、そうやって音楽の世界で自分の作業がニーズをもらってる時点で、満ち足りてたんですよね。だからこれ以上何を俺は声高に叫んで行かないといけないのか?といろいろ考えましたよ。今さら恋してる愛してるじゃないしさ、世の中を変えようぜじゃないしさ。39歳になってさ、そういうとこじゃないとこに自分がいたんだよね。正直そこで凄い悩んで、今までの自分や生活を振り返ってみてもいいんじゃないかって思ったんですね。たかだか39年ですけど、振り返ってみてこんな生き方も悪くないなってことを書いてみようかなって思ったんですよ。若い頃は、歌を書く視点で時々『お前ももっと頑張らなきゃダメだぞ』っていう詞を書いてきたつもりがあったんだけど、その視点って、俺はわかってるけど、お前はわかってないんだっていうような、ある程度上から見たりとか、人がやってることをそんなんじゃダメだと認めないところからのスタートだったりするわけじゃん。そういうのも全部とっぱらったところで、自分も人も全部認めて呑み込んで、今の世の中が上手く回ってるっていうことを肯定した上で、歌を書いてみようかなっていうところから始まったんですね。幼少期の時に『スター・ウォーズ』に憧れていた自分のことを書いてみたりとか、30年前ビートルズを聴いて感動した話を書いてみたり、80年代にバブルが崩れて行く時に、働いていた暴力団の大工の建設会社の社長が手形の不渡りくらって丸焦げになって行く姿を見た、その人生を書いてみたりとか、そんなことを思ったら、『love your life』という『お前の人生もそんな悪くないよ』ってアルバムになりました」

こういう言い方はクリエイティヴじゃないし、ズルいやり方かもしれないが、スパイラルライフ、Cocco、スピッツにダイレクトに関わってきたことから得られる音楽財産は何にも換え難いものだし、何故石田ショーキチがそんな人生を歩めたのか?——その答えを音楽で表すだけで意義深いポップ・ミュージックが生まれるのは必然でもある。
ここにある『love your life』は、彼のキャリアの中で最もメロディアスでダンサブルでメランコリックな傑作アルバムである。ここには今世界中のロックのメインストリームになっている「踊れるロック」という四分打ちギター・ロックや、80年代ニュー・ウェイヴ感が溢れている。ある意味「流行の世界」だ。しかしショーキチはそんな通俗性を微塵も考えていない。はっきり言って、そういうことはよくわかっていない男だからである。しかし、彼の中にはロックとポップの本質があり、その本質がここでは無邪気にまっすぐ鳴っている。要は石田ショーキチの集大成そのものなのである。
前述したように「音楽で人生を肯定しよう」と考え、その意志を露にしたポップを石田ショーキチが生み出したことは、それ自体が「音楽と人生」にとって幸福な出来事である。クオリティ・ライフをクオリティ・ポップが響かせる——そんなマジックが働いている『love your life』は、この国のロックとポップにとって「3度の飯」のようなものだと思う。


鹿野 淳(MUSICA)

ishida shokichi

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