ポールマッカートニーから受け取った物
2013.11.21 20:44 [ 石田ショーキチ ]
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今頃東京ドームではポールマッカートニー東京公演の千秋楽が幕を開けた頃かと思いますが、一昨日終始涙目で観たあの奇蹟のようなライブについて、書き残そうと思います。

各地で見た誰もが感動の嵐だったとか、涙が止まらなかったとか言います。私も例外ではなく、Jetで涙腺が決壊してから後はずっと涙の台風が勢力を増しながら居座り続けており、もはやハンカチもその役割を果たさない程でした。

では、誰もが泣いたというあのポールマッカートニーのライブの凄さの理由は何処にあるのでしょうか。

ライブ中盤、The long and winding roadが始まった時、それまで周囲で聞こえていた沢山の歌声がしんと静まり返ったので、おやおやと見回してみたところ。目をつぶってじっと聞きいる人、ただただ泣きながら見つめる人、娘の手を取りながら涙するお母さん、とにかく誰もが想いを噛み締めながら聞き入っていました。

この時理解しました。そう、僕たちは、自分の中のビートルズと人生を生きてきたのだ、ということを。

小学二年からビートルズを聞いて来た僕は37年もの間ビートルズを聞いて来たのですが、ここにいる五万人の全ての人が、或いは50年、或いは40年、或いは20年とか、自分自身が共に歩いてきた自分の中のビートルズと、まさにこの「曲がりくねった長い道のり」のような人生を思い、そしてそれを現実として目の前で歌う本物のビートルに出逢えた奇蹟に感動し、涙を流しているのでした。ただ単にいい曲だから、好きな曲だから泣いてるんじゃない。自分の人生には常に音楽があり、ビートルズがあった。辛かったことも楽しかったことも、その歴史の全てを語ってくれる曲。それがThe long and winding roadでした。

変な話ですが、今この会場には五万人の人がいて、この全員のビートルズを聞いて来た平均年数を仮に三十年とすると、その延べ時間は
50,000×30=1,500,000
なんと150万年。舞台の上のポールはこの150万年分の人々の思いというより人生を、すべて一人で受け止めて、更にそれを倍返ししながら歌っているのでした。そうです。我々が泣いてたのはポールが自分自身と会わせてくれたから。幼い頃若い頃にビートルズを聞いた時に感じた感動と興奮、それを追体験させてくれたからではないでしょうか。

ポールは一つの曲が終わった後にすぐに次の曲に移るようなことはしませんでした。一曲終わるごとに観客に語りかけ、茶目っ気あるポーズをとり、ギターを見せ、ああこれは、曲の余韻と感動の水位がゆっくりと浸透していく、熟成していくのを見届けているんだな、と思いました。

歌というのはそれが作られ歌手の口から発せられる瞬間までは歌手のものですが、それが聞き手に届いた時、ましてやそれを感動として受け取ったその瞬間から、聞き手の心の中に住みつき、共に人生を歩むようになります。ポールは、今や全地球上の音楽ファンの心の中のビートルズを、その全ての人の人生を、たった一人で(リンゴ申し訳ない)背負って、そして現役のロックシンガーとして歌を作り、歌い続けているのです。

参りました。

人の人生に入り込む自分の音楽。それによって自分に向けられる思い。それを全て受け止め、更にもっと大きな感動にして返すのだという自覚、覚悟、自信、自負。何万人だろうとかかって来い。音楽の力で全て幸せにしてやる。ポールはそう歌っていました。君にはその覚悟があるか?そうも歌っていました。泣くしかありませんでした。

この数年、子供が増え、家族に恵まれ、かつてのように孤独と戦う為に自分を歌うなんていうテーマが無くなった、もう自分のことなんて歌いたくない、と言い続けて来た自分が恥ずかしくなりました。シンガーソングライターが歌を作りそれを歌うのは、一度作って歌った音楽が人の人生と共に歩き出した瞬間から、その事実を逃げずに背負い、受け止めて倍にして返す、それが宿命であり責任であり、それが出来る人間しか舞台に上がってはいけないのだ。ポールが僕にそう言いました。

このライブを見なかったらきっと僕は来年もまた大して曲もつくらず過ごしたことでしょう。彼のライブを見た将来と見なかった将来は絶対に違う。心ある音楽家なら皆何かを受け取ったことでしょう。僕は音を発する者としての責任を受け取りました。来年はニューアルバムを作ることにします。

そんな思いを込めて、明日の岡山から、この週末は西日本で秀樹と歌って来ます。私からは以上です。

〜岡山に向かう車中にて〜

ishida shokichi

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