GRECO MIRAGE リペア日記

 

99年11月30、渋谷CLUB QUATROのライブでコノ私としたことが、こともあろうか大切な愛機グレコミラージュ M-90を叩き壊してしまった。ネックはボディ付け根からばっくりと折れ、ボデ ィは縦に真二つに割れ、ピックアップの配線はちぎれ、ボディのいたるところに陥没 /ささくれが出来てしまった。とても大事にしていた楽器に、なんのはずみか大変な ことをしでかしてしまった。やってしまってからそれはそれは大変な後悔をしたが、 壊してしまったものはどうしようもない。ついては3月末のツアーに向けて、壊した 翌日から同じモデルを探し捲った。しかしながら気に入ったモデルはとうとう見つか らず、仕方なく自分で修復することにした。

ミラージュとは、70年代-80年代初頭まで神田楽器(グレコ)で生産され た日本独自のフォルムを持った数少ない変形ギターの一つである。当時のラインナッ プはM700、M-800、M-900、M-1000で、品番の数字はその価格を表している(例:M-1000=10万円)。その源 流は当時グレコの輸出用製品を作っていたIBANESE(当時はイバニーズと呼んだ)の アーティストモデルとして開発されたKISSのPaul StanleyモデルICEMAN=PS-10(70-80年代のキッスの写真などに多分に見ることができる)であり、そ の国内版がミラージュである。因みにミラージュのほうもチープトリックが来日した 際にグレコがリックニールセンにブルーのM-1000 をプレゼントし、一時期好んで使いトレードマークとしていた。

僕のM-90は90年代初頭の再生産モデルで、グレコのギターでありながらどちらかと いうとPS-10的なデザイン(ミラーヘッドカバー)やコントロール系統(2ボリューム 1トーン)を施したモデルである。人に言わせると再生産物は作りが悪いとかいう話 もきいたことがあるが、オリジナルのミラージュは2ボリューム2トーンでコントロー ルポットが多く、その操作性、デザイン性両方に於て僕の趣味ではない。1999年1月 のある日、たまたま新大久保の中古楽器屋で3万2千円で売っていたM-90を見つけたの が運のつき、ならしてみたら非常に好みの音で大層気に入ったので購入、以後レコー ディング/ライブ共にメインで使用してきたお気に入りのギターである。

さて、このぶっこわれたミラージュ(修復前の写真をとってくのを忘れ た!!)、3/11現在まで、代替え品に出会えなかった。そして壊してしまって申し訳 ないと思う気持もあって、自分の手で修復にかかった。今回のツアー初日は3/27大阪 公演、果たしてそれに間に合わせるように修復することができるであろうか ....

 

今回このギターを修復するにあたっての方針は以下のものである。

1.カラーは元のダークブルーに忠実に 2.ピックアップはより自分好みに シングルコイルを装着 3.コントロールはシンプルに1ボリュームのみ 4.とにかく 丁寧に、素人が適当にくっつけたと思われないくらいのすばらしいレベルに仕上げる

というわけで、超多忙な日課の中、わずかな暇を酷使しての壮大なるギタ ー修復作業。ツアーに間に合うことが出来るか、こうご期待。


3/11 まずはまっぷたつに割れたボディを接着する。本来接着されていたライン に沿って一直線にあまりに奇麗にぱっくりと割れていたのだが、これは元々の接着が 甘かったということなのだろう(噂通り作りが安い)、やすりで軽く断面の凹凸を取 った後、一割ほどお湯で薄めた木工用ボンドをはけで塗って接着、タンスなどの地震 対策用のつっぱり器具で左側からグッと押して固定、待つこと少なくとも24時間。

木工用ボンドと言うとみんなすぐ笑うが、木と木を接着することにおいて これ以上の接着剤はないのだ。なんたって大工さんが家を建てる時に必ず使う接着剤 なのだ。お湯で溶いたのは少し柔らかくして浸透性を上げる為である。楽器は確実に 振動が伝わることが第一条件、よって隙間なくがっちりくっつけなくてはならないの で、ある程度の柔らかさが求められる。


3/12 昨日の接着は見事にがっちりとくっついた。これはよい振動を伝えるボ ディになるなと確信。当然のことながらボディ表面の継ぎ目も塗装の割れなどからけ っこうな段差ができている。あちこちふりまわされてぶつけられて出来たクラックも たくさんある。これらを全部パテ埋めしてサンディング(やすりがけ)し、つるつる のボディにしないとならない。写真で見える白っぽい部分がパテ埋めした部分。因み にパテは各社使ってみたが、やはり田宮模型のパテが圧倒的によかった。

最初は80番のやすりで大まかに凹凸の削り落としをして全体のシェイプを 整えていく。次に120番、240番と番手を上げていき、最後は400番まで、徐々に表面 を滑らかにしていく。

 

 


3/13 先にネックを接着しようか迷ったが、別々のままの方が塗装しやすいかと 思い、先に塗装に入る。今回使用している塗料は、カー用品店で売っている車の補修 用スプレーである。豊富なカラーチャートからニュアンスの近い色を選べると思い、 用賀のオートテックで割れたボディ表面の一部を持ってチャートに当てて見比べなが ら選んだ結果、オペルとBMWのダークブルーがM-90の色とよく似ていたのでその両方 を購入。因みにオペルの方はマイカが入っている。

BMW用の塗料で一度目の塗りが済んだ所。


スキャナを繋げるマックを修理に出していたため、更新が随分と遅れま した。結論から言うと、ミラージュは見事復活しました。しかしそれにも色々変遷が あり、個人的には泣ける話です。

 

3/24 ネックとボディの接合が完了し、こまかい塗装の補修など施しました。翌 日はリハーサル最終日、ここまでなんとか間に合ったことに満足、美しいミラージュ のボディに見入っては悦に入っていました。

3/25 ツアーのリハーサル最終日ミラージュは堂々リハーサルに参加、実にい い音、メインギターとしてツアー機材車に無事積み込まれました。

しかし本番初日3/27大阪心斎橋クラブクアトロ、リハーサル時にネック接合部に不具合を発 見、急遽家に宅配便で送り返しました。万感の思いをこめて修復したメインギター、 思いきりあてにしていたのでそれがなくなってしまった大阪のライブではローランド のG-707を登板させましたが大変に苦労したステージでした。

28日は名古屋でのライブ、急遽名古屋にて安目でもちゃんと使えるギター探し に出かけました。名古屋の米兵という質屋あがりのディスカウントショップにて中古 楽器が豊富にあるという話をASHから聞き、タクシーにて乗り付け、Orvil のファイアーバードとアリアのセミアコ(いずれもホワイト)を購入、このファイア ーバードがまた大当たりで最高のライブが出来ました。

翌日29日、家に戻るやいなや楽器屋と東急ハンズを回ってネックを補強するための 部品集めに奔走し、セットネックをさらにボルトオンして補強、結果音なりもさらに よくなって正解でした。で、そこでやめておけばいいものを、またまた色気が出てし まいまして...

30日、塗装に艶が足りなかったためにクリアラッカーの厚塗をほどこしま す。これが大失敗でした。写真ではわかりにくいのですが、厚くかけすぎたラッカー の為に下の青が溶けて流れだし、塗装に思いきりムラがでてしまいました。がしか し、もう時間がないのでやり直している場合ではありません。

31日、渋谷オンエアイーストでのライブ、名古屋で買ったファイアーバードが あまりに気に入った為にメインギターにしましたが、何曲かで復活したミラージュも 使い、恍惚の表情で(笑)弾き倒しました。よかったよかった。

今回、最初のプランと違う出来上がりになりました。モズライトのシング ルコイルを載せるつもりでしたが、ツアーのリハーサルを重ねるうちにやはりハムバ ッカーのほうがよいと思うようになり、元来載っていたオリジナルピックアップを載 せました。しかしながら、2ボリューム1トーンのコントロール系は僕には非常に使い 辛かったため、最後尾のポット穴はボディの修復の際にパテで埋めてしまい、1ボリ ューム1トーンにしました。これがまた思い通りの操作性で最高です。

まだまだラッカー臭がプンプンのミラージュ、何度見ても素敵なデザイン です。もうこの一本は宝物です。

 


[ Back to Where you were ]